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第9話 いじめを知った日 〜親になって初めて分かった気持ち〜

第9話 いじめを知った日 〜親になって初めて分かった気持ち〜

市立小学校と盲学校の二重生活。

家族みんなで支えながら、裕太は少しずつ成長していました。

友達もでき、学校の話もしてくれる。

親としては順調に学校生活を送っているものだと思っていました。

しかし、それは私たちの思い込みだったのかもしれません。


裕太は何も言わなかった

今でも社会人になった裕太を見て思うことがあります。

裕太は人の悪口を言いません。

職場の上司や同僚に対してもそうです。

嫌なことがあっても、自分の中にしまい込んでしまう性格です。

小学生の頃も同じでした。

だからこそ、私たち親は気づくことができませんでした。

学校で何が起きていたのかを。


妻から聞かされた話

ある日の夕方、妻から言われました。

「明日、学校の子と親御さんが謝りに来るから、夜は家にいてね」

突然の話でした。

何があったのか詳しく聞くと、私は言葉を失いました。

裕太が学校でいじめを受けていたというのです。

しかも、その内容は親として聞き流せるものではありませんでした。


トイレの画鋲事件

裕太はトイレに画鋲を置かれるという嫌がらせを受けていました。

視力に障害があることを知りながらの行為です。

もし気づかずに踏んでいたら。

もし大きな怪我をしていたら。

そう考えるだけで怒りが込み上げてきました。

弱い立場の子どもに対して、なぜそんなことができるのか。

父親として許せない気持ちになりました。


怒りの矛先は自分にも向いた

もちろん、いじめをした子どもに対する怒りはありました。

しかし、それ以上に腹が立った相手がいました。

それは自分自身です。

毎日顔を見ていたのに。

一緒に暮らしていたのに。

なぜ気づいてやれなかったのか。

父親として情けなくなりました。

もっと早く話を聞いてあげればよかった。

もっと様子を見てあげればよかった。

そんな後悔ばかりが頭をよぎりました。


親になって初めて分かったこと

実は私自身、子どもの頃は決して優等生ではありませんでした。

悪ガキだったと思います。

友達といたずらもしました。

叱られることもたくさんありました。

しかし、弱い立場の人を狙ったり、身体的な特徴をからかったりすることだけは違うと思っています。

あの日、私は初めて自分の親の気持ちが分かりました。

子どもが傷つけられることが、こんなにも辛いものなのかと。


謝罪の日

翌日の夜。

いじめをした子どもと親御さんが我が家へ来られました。

玄関先で頭を下げる親子。

複雑な気持ちでした。

怒鳴ろうと思えば怒鳴れたかもしれません。

しかし、目の前にいるのはまだ小学生です。

親御さんも真剣に謝罪されていました。

私たちは話を聞き、二度と同じことを繰り返さないようにお願いしました。


裕太の強さ

何より驚いたのは裕太本人でした。

本人は大きく騒ぐこともなく、相手を責めることもしませんでした。

悔しかったはずです。

辛かったはずです。

それでも誰かを憎むような言葉は口にしませんでした。

その姿を見て、

「この子は親が思う以上に強い子なんだな」

と感じました。


今だから思うこと

いじめは決して許されることではありません。

しかし、この出来事を通じて私たち家族は大切なことを学びました。

子どもは親に心配をかけたくなくて、本当のことを言わない場合があること。

そして、どんなに忙しくても子どもの小さな変化を見逃してはいけないこと。

あの日の後悔は今でも消えることはありません。

だからこそ、同じように子育てをしている親御さんには伝えたいのです。

子どもの「大丈夫」は、本当に大丈夫ではないこともあるのだと。


次回予告

小学校生活の中で経験したいじめ。

しかし、その後の家族の人生を大きく変える出来事が待っていました。

それは父親である私の転勤話でした。

次回、

「第10話 父の決断、大分転勤 〜家族の未来を考えた選択〜」

家族会議を重ねて出した、大きな決断についてお話しします。

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