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9.92026
第12話 再びタクシー業界へ〜出戻りだからこそ見えた景色〜

職業訓練校を終えた頃、一通の連絡が入りました。
「戻っておいでよ。」
「また一緒にタクシーに乗ろう。」
長年一緒に働いてきた乗務員仲間からの言葉でした。
正直、すぐには返事ができませんでした。
事故の後遺症もあり、体調はまだ万全ではなかったからです。
本当にもう一度ハンドルを握って大丈夫なのか。
何日も悩みました。
会社へ相談すると、
「無理のない勤務でいい。」
「時間もできる限り配慮する。」
そう言っていただき、再びタクシー業界へ戻る決意をしました。
実は、私に声が掛かった理由はもう一つありました。
それはパソコンを使える人材を探していたことです。
私が勤務していた会社には労働組合がありました。
会社と乗務員との間では、
賃金体系、労働時間、残業代、歩合給の割合、深夜手当、カード手数料の負担など、働く環境について定期的に話し合いが行われます。
こうした労使交渉や三六協定に関する資料作成などを担当するため、
理事、副理事長、書記長、会計が選挙で選ばれます。
……とは言っても、実際は誰もやりたがりません。
結局は推薦です(笑)。
会社の中でパソコンを扱える乗務員は、私を含めてわずか二人。
以前から書類のひな形を作ってくださっていた先輩から、
「今度は君が書記長をやってくれないか。」
と声を掛けられました。
職業訓練校で学んだWordやExcel。
「あの時の勉強が、こんなところで役に立つんだ。」
そう思った瞬間でした。
タクシー業界は高齢化が進み、当時はスマートフォンよりもガラケーを使っている方が多い時代でした。
パソコンを使えるだけで頼りにされる。
少しだけ優越感に浸れた瞬間でもありました(笑)。
改めて感じたことがあります。
学んだことは、決して無駄にはならない。
いつか必ず、自分を助けてくれる日が来る。
そう実感した出来事でした。
しかし、ようやく仕事にも慣れ始めた頃、日本中が経験したことのない出来事が起こります。
新型コロナウイルスの感染拡大。
街から人が消え、タクシー業界も大きな転機を迎えることになりました。
次回予告
第13話 コロナ禍で止まった街
〜タクシー業界最大の危機〜
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