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9.102026
第13話 コロナ禍で止まった街〜タクシー業界最大の危機〜

2020年春。
日本中が、新型コロナウイルスという未曽有の危機に直面しました。
4月には緊急事態宣言が発令され、街から人の姿が消えていきます。
タクシー業界にとっては、まさに死活問題でした。
人が外出しなければ、お客様もいません。
私たちの仕事そのものが止まってしまったのです。
当時のタクシー車内は、感染防止対策として運転席と後部座席の間に透明なシートを設置しました。
お客様を一人お送りするたびにアルコール消毒。
咳が聞こえるたびに、お互いが不安になる。
乗務員もお客様も、常に緊張した状態でした。
それでも仕事を続けなければ生活できません。
しかし、完全歩合給のタクシードライバーにとって、この状況は想像以上に厳しいものでした。
会社には国の助成金がありましたが、乗務員が受けられる恩恵は限られていました。
ある日のことです。
約20時間乗務して、お客様はわずか2名。
売上は1,120円。
そこから歩合率46.7%で計算すると、その日の収入はほんのわずかです。
ハンドルを握り続けても、お客様がいなければ売上はゼロ。
その現実を前に、心が折れそうになりました。
この頃、多くの仲間がタクシー業界を去っていきました。
歩合給だからこそ頑張れる。
そう信じてきた私でしたが、この時ほど歩合給のリスクを痛感したことはありませんでした。
それでも私は、この仕事が好きでした。
目的地まで安全に送り届ける。
「ありがとう。」
「助かったよ。」
そんな一言をいただけるたびに、この仕事を選んで良かったと思えました。
飲酒運転を防ぐためにハンドルを握る。
病院へ向かう方をお送りする。
終電を逃した方の力になる。
タクシードライバーは、地域の暮らしを支える大切な仕事です。
だからこそ、コロナ禍で仕事が激減していく現実は、本当に悔しいものでした。
そんな中、私は考えました。
運転という経験を生かし、人に感謝される仕事は、他にもあるのではないか。
その答えが、私の新しい人生への第一歩となりました。
次回予告
最終話 タクシーが教えてくれた人生
〜新しい働き方との出会い〜
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