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第13話 コロナ禍で止まった街〜タクシー業界最大の危機〜

2020年春。

日本中が、新型コロナウイルスという未曽有の危機に直面しました。

4月には緊急事態宣言が発令され、街から人の姿が消えていきます。

タクシー業界にとっては、まさに死活問題でした。

人が外出しなければ、お客様もいません。

私たちの仕事そのものが止まってしまったのです。

当時のタクシー車内は、感染防止対策として運転席と後部座席の間に透明なシートを設置しました。

お客様を一人お送りするたびにアルコール消毒。

咳が聞こえるたびに、お互いが不安になる。

乗務員もお客様も、常に緊張した状態でした。

それでも仕事を続けなければ生活できません。

しかし、完全歩合給のタクシードライバーにとって、この状況は想像以上に厳しいものでした。

会社には国の助成金がありましたが、乗務員が受けられる恩恵は限られていました。

ある日のことです。

約20時間乗務して、お客様はわずか2名。

売上は1,120円

そこから歩合率46.7%で計算すると、その日の収入はほんのわずかです。

ハンドルを握り続けても、お客様がいなければ売上はゼロ。

その現実を前に、心が折れそうになりました。

この頃、多くの仲間がタクシー業界を去っていきました。

歩合給だからこそ頑張れる。

そう信じてきた私でしたが、この時ほど歩合給のリスクを痛感したことはありませんでした。

それでも私は、この仕事が好きでした。

目的地まで安全に送り届ける。

「ありがとう。」

「助かったよ。」

そんな一言をいただけるたびに、この仕事を選んで良かったと思えました。

飲酒運転を防ぐためにハンドルを握る。

病院へ向かう方をお送りする。

終電を逃した方の力になる。

タクシードライバーは、地域の暮らしを支える大切な仕事です。

だからこそ、コロナ禍で仕事が激減していく現実は、本当に悔しいものでした。

そんな中、私は考えました。

運転という経験を生かし、人に感謝される仕事は、他にもあるのではないか。

その答えが、私の新しい人生への第一歩となりました。


次回予告

最終話 タクシーが教えてくれた人生

〜新しい働き方との出会い〜

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