ブログ

第9話 もらい事故が教えてくれたこと〜安全運転だけでは守れない現実〜

私が勤務していたタクシー会社は、地域密着型の会社でした。

南には山、北には海が広がる自然豊かな町。

観光客も多く訪れ、特に人気だったのが海沿いにある**「ヤシの木ブランコ」**でした。

駅から乗車された県外のお客様を現地までお連れし、

「写真を撮ったらすぐ戻るので待っていてください。」

と言われ、そのまま駅までお送りすることもよくありました。

距離もあるため、タクシードライバーにとってはありがたいお仕事でした。

そんなある晴れた日。

無線配車を受け、お客様のもとへ向かっている途中のことです。

田んぼ道の交差点から、一時停止をせずに白いクラウンが突然飛び出してきました。

私はとっさに急ブレーキを踏みました。

しかし、避けることはできませんでした。

衝突の勢いでタクシーは橋の欄干へ突っ込み、エアバッグが作動。

ボンネットは大きくへこみ、車は大破しました。

相手は21歳の男性。

助手席には、小さなお子さんを抱いたお母さんが乗っていました。

相手方に大きな怪我がなかったことだけは、本当に救いでした。

一方で私は、

首、腰、左肘、そして左親指を負傷。

治療には長い時間がかかりました。

身体の傷は少しずつ回復していきました。

車も修理すれば元に戻ります。

しかし、事故の瞬間の恐怖だけは簡単には消えませんでした。

今でも、ふとした瞬間にあの日の光景を思い出すことがあります。

事故の記憶がよみがえり、胸が締めつけられることもありました。

心の傷は、目には見えません。

だからこそ、回復にも時間がかかるのだと実感しました。

タクシードライバーとして学んだことがあります。

それは、

「自分がどれだけ安全運転をしていても、防ぐことのできない事故がある。」

という現実です。

だからこそ、ハンドルを握るすべての方にお願いしたいと思います。

一時停止を守ること。

焦らないこと。

思いやりのある運転をすること。

その小さな積み重ねが、大切な命を守ることにつながります。

タクシードライバーという仕事は、人との素敵な出会いもあれば、こうした試練にも直面します。

良いことも、悪いことも含めて、人生そのものを映し出す仕事なのかもしれません。


次回予告

第10話 酔っ払い、乗り逃げ、そして人間模様

〜タクシーで見た夜のドラマ〜

─────────────────

📚 シリーズ一覧

👉 このシリーズを最初から読む

📖タクシードライバー奮闘記一覧


⬅ 前の記事


➡ 次の記事

🌿 あわせて読みたい

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


ページ上部へ戻る