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9.62026
第9話 もらい事故が教えてくれたこと〜安全運転だけでは守れない現実〜

私が勤務していたタクシー会社は、地域密着型の会社でした。
南には山、北には海が広がる自然豊かな町。
観光客も多く訪れ、特に人気だったのが海沿いにある**「ヤシの木ブランコ」**でした。
駅から乗車された県外のお客様を現地までお連れし、
「写真を撮ったらすぐ戻るので待っていてください。」
と言われ、そのまま駅までお送りすることもよくありました。
距離もあるため、タクシードライバーにとってはありがたいお仕事でした。
そんなある晴れた日。
無線配車を受け、お客様のもとへ向かっている途中のことです。
田んぼ道の交差点から、一時停止をせずに白いクラウンが突然飛び出してきました。
私はとっさに急ブレーキを踏みました。
しかし、避けることはできませんでした。
衝突の勢いでタクシーは橋の欄干へ突っ込み、エアバッグが作動。
ボンネットは大きくへこみ、車は大破しました。
相手は21歳の男性。
助手席には、小さなお子さんを抱いたお母さんが乗っていました。
相手方に大きな怪我がなかったことだけは、本当に救いでした。
一方で私は、
首、腰、左肘、そして左親指を負傷。
治療には長い時間がかかりました。
身体の傷は少しずつ回復していきました。
車も修理すれば元に戻ります。
しかし、事故の瞬間の恐怖だけは簡単には消えませんでした。
今でも、ふとした瞬間にあの日の光景を思い出すことがあります。
事故の記憶がよみがえり、胸が締めつけられることもありました。
心の傷は、目には見えません。
だからこそ、回復にも時間がかかるのだと実感しました。
タクシードライバーとして学んだことがあります。
それは、
「自分がどれだけ安全運転をしていても、防ぐことのできない事故がある。」
という現実です。
だからこそ、ハンドルを握るすべての方にお願いしたいと思います。
一時停止を守ること。
焦らないこと。
思いやりのある運転をすること。
その小さな積み重ねが、大切な命を守ることにつながります。
タクシードライバーという仕事は、人との素敵な出会いもあれば、こうした試練にも直面します。
良いことも、悪いことも含めて、人生そのものを映し出す仕事なのかもしれません。
次回予告
第10話 酔っ払い、乗り逃げ、そして人間模様
〜タクシーで見た夜のドラマ〜
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