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最終話 ありがとう、お母さん〜最後の親孝行〜

親から子へ、子から親へ。そして次の世代へ

母は87歳で永眠しました。

私たち兄弟は4人。

男3人、そして6歳離れた妹。

今、この物語を書きながら振り返ってみると、母は4人の子供を育て上げたんだなと思います。

育ち盛りの子供が4人もいれば、毎日の食事を作るだけでも大変だったでしょう。

洗濯をして、掃除をして、学校へ送り出す。

子供が病気になれば心配し、悪いことをすれば叱る。

時には優しく。

時には厳しく。

私たち4人を見守りながら、母は家族を守ってくれました。

子供の頃の私は、そんな親の苦労なんて考えたこともありませんでした。

「なんで怒られるんやろ?」

「なんで買ってくれんのやろ?」

そんなことばかり考えていたように思います(笑)

でも、私も大人になりました。

結婚し、二人の子供の親になりました。

そこで初めて分かったことがあります。

家族を守るということは、本当に大変なことです。

働いて、生活を支え、子供を育てる。

自分のことだけを考えて生きるわけにはいきません。

そして、自分が親になってみて、改めて感じたのが女性の力強さでした。

子供を産み、育て、家族を支える。

母もそうやって私たち4人を育ててくれたんだと思うと、

「母親って偉大やな。」

心からそう思います。


親の背中が小さく見えた日

子供は成長し、やがて大人になります。

そして自分が大人になってから、もう一度親の背中を見る。

子供の頃は、あんなに大きく見えた親の背中。

それがいつの間にか、小さく見えるようになっていました。

父を67歳で亡くし、一人暮らしになった母。

施設を探し、病院へ付き添い、買い物をして、ケアマネジャーさんとの打ち合わせに参加する。

そして病気が進行してからは、入退院を繰り返しました。

気がつけば妹と二人で、母を支えることが多くなっていました。

毎週日曜日には母のところへ行き、

「今日は何が食べたい?」

と聞く。

浜勝。

スシロー。

焼き鳥。

ステーキ。

最後まで食べることが大好きな母でした(笑)

一緒に食べて、一緒に話して。

耳が聞こえにくくなれば、紙に書いて会話をしました。

特別なことをしてあげたわけではありません。

ただ、母のそばにいただけです。

でも今になって思います。

あの時間こそが、私にできた親孝行だったのかもしれません。


親孝行は、親がいるうちに

母を看取る時、いろいろなことを思い出しました。

子供の頃のこと。

父に怒られたこと。

家族15人で集まったお正月。

母と行った嵐のコンサート。

病院帰りに二人で食べたステーキ。

退院祝いで行ったスシロー。

毎週日曜日の昼ご飯。

そして87歳の誕生日に食べた、最後のピザとケーキ。

一つ一つは、ごく普通の出来事です。

でも、母がいなくなった今では、その一つ一つが大切な思い出になりました。

だから私は思います。

親孝行は、親がいる時にしなきゃ。

「いつかやろう。」

そう思っていても、その「いつか」が来るとは限りません。

電話一本でもいい。

一緒にご飯を食べるだけでもいい。

昔の話を聞くだけでもいい。

親にとっては、子供が顔を見せてくれることが何より嬉しいのかもしれません。


生んでくれて、ありがとう

私は母に、自分の思いを伝えることができたと思っています。

子供の頃には言えなかった言葉。

若い頃には、照れくさくて言えなかった言葉。

自分が親になり、母を見送る年齢になって、ようやく心から言えるようになりました。

「お母さん、生んでくれてありがとう。」

4人の子供を育ててくれて、ありがとう。

家族を守ってくれて、ありがとう。

そして最後まで、私たちの母でいてくれて、ありがとう。


家族の絆は、これからも続いていく

今度は、私たちの番です。

私にも二人の子供がいます。

いつか子供たちも年齢を重ね、親になり、家族を持つかもしれません。

その時に、私が父や母から教えてもらったことを、少しでも思い出してくれたら嬉しい。

家族だから腹が立つこともあります。

けんかすることもあります。

分かり合えない時だってあります。

それでも、困った時には誰かが手を差し伸べる。

親が子供を想い、

子供が親を想う。

そして、その想いがまた次の世代へ受け継がれていく。

家族の絆は、親から子へ。
そして子から親へ。
さらに、次の世代へとつながっていく。

それが、この30話を書きながら私がたどり着いた答えです。

親になって初めて分かった、親のありがたさ。

そして、親を見送って初めて分かった、家族と過ごす時間の大切さ。

最後にもう一度だけ。

お父さん、お母さん。

私を生んで、育ててくれてありがとう。

そして、お母さん。

本当にお疲れさまでした。

ありがとう。

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